小説

小説

【SF小説】残響の鳴る輪 第三部『地上の鐘、空の返し先』

第三部『地上の鐘、空の返し先』第1章 塔の足音 軌道エレベータ《オルフェウス》の降下カプセルは、地上の湿った空気を先に嗅ぎ取って震えた。 窓の外、夜明け前の海が鉛のように澄んでいる。陸地の縁に古い街が貼りつき、尖塔が一本、まだ暗い空を刺して...
小説

【SF小説】残響の鳴る輪 第二部『沈黙に割れる輪』

続編『沈黙に割れる輪』——「カラン」が消えるとき、記憶はどこへ落ちる?第1章 無音の断片 《アストレイア》は今日も一周を、いつものように鳴らすはずだった。 カラン——のはずが、南東端のセクションだけ、音が抜け落ちた。地図上に白い欠けが浮かぶ...
小説

【SF小説】残響の鳴る輪

第1章 残響の鳴る輪 地球は、窓の向こうで青い沈黙を保っていた。 オルビタル実験都市《アストレイア》――直径百二十キロの輪は、内部に街区と工房、試験管制を抱え、一定間隔で「カラン」とグラスを触れ合わせるような微細な音を鳴らす。失敗した跳躍の...
小説

【小説】川風の約束 ―氷室の口笛―

「期間未定」の貼り紙に揺れる町家。和菓子職人・翠と写真家・空は、風で鳴る琥珀糖を武器に人の輪を呼び、町と恋の行方を光で決めていく。
小説

【小説】死角の設計図

第1章 火の匂いの商店街 秋の夜は、からっ風の代わりに溶剤の匂いで頬を刺す。駅前アーケードでは、再開発の仮囲いが半分外され、鉄骨がむき出しになった天井から白い養生シートが垂れている。百目鬼恵は、学校から借りた一眼を首から下げ、シャッター通り...